認知添加物図鑑
情報環境の公衆衛生シリーズ 第1巻
スマホの画面で、あなたは何を摂らされているのか。
概要
食品に添加物があるように、デジタルコンテンツにも「つい見てしまう」ための成分が配合されています。際どいサムネイル、正義の怒りを誘うまとめ、結論を最後まで引き延ばす動画。私たちはそれらを、脳の側の反応ではなく、コンテンツの側に含まれる成分として捉え直し、「認知添加物」と名づけて分類しました。
この図鑑は、規制や禁止を求めるものではありません。食品のラベルを見る習慣が食生活を変えたように、情報にも「成分表示を見る目」を持てるようになること。そのための、観察と分類の記録です。
手に取りやすく、刺激が強く、満腹感だけはある。情報は、いまや「超加工食品」に近い。
成果物
学会発表
芸術工学会 2026年度秋期大会
2026年10月24日・大阪
「認知添加物:デジタルコンテンツに含まれる「つい見てしまう」要素を分類・可視化するサイエンスコミュニケーションの試み」
掲載17成分
名称は食品添加物のもじり。詳しい定義と含有例は電子書籍に収録しています。
| 本能ハック型 / 5成分 | |
| 肌色一号 | 性的なほのめかしを「ちょっとした刺激」として日常のコンテンツに混ぜ、注意を引く |
|---|---|
| べっぴん酸 | 魅力的な外見を前面に置き、その好印象を内容の評価にまで転移させる |
| グロコサミン | 嫌悪感と「何が起きたのか確かめたい」好奇心を同時に誘う |
| エキサイ糖 | 安全な場所にいながら、危険の疑似体験で覚醒と興奮を引き起こす |
| プチャ偏酸 | リズムと掛け声への同調で、判断より「ノリ」を優先させる |
| 感情ハック型 / 7成分 | |
| ダンザイム | 怒りを「正義」で正当化し、悪と断じた相手を徹底的に裁かせる |
| 増念罵倒類 | 罵倒したい衝動をじわじわ増粘させ、些細な刺激でも叩きたくさせる |
| ケンカロイド | 他人同士の対立を観戦エンタメに変え、興奮だけを摂取させる |
| クチダシ色素 | あえて隙やツッコミどころを配合し、口出しせずにいられなくさせる |
| フリン酸ネトリウム | 証拠のない「裏があるのでは」という疑念だけを静かに注入する |
| 他災甘味料 | 他人の失敗や不幸を、甘い快感として摂取させる |
| O-NMDA | お涙頂戴の感動刺激を、感情の記憶に強く結びつける |
| 認知歪曲型 / 5成分 | |
| ユメミガチン | 成功を、確率や過程を省いた理想形だけで見せ、努力量の感覚を歪める |
| カンタン化糖 | 「誰でも」「すぐ」「これだけで」に単純化し、必要な努力と失敗を見えなくする |
| ヤミノソシキン | 「世界の裏には闇の組織がいる」物語を、信じる手前で娯楽として消費させる |
| カサマシン | わずかな中身を前置きと繰り返しで膨らませ、情報量があるように見せる |
| ジラシウム | 結論を後回しにし、「まだ大事な話が続く」感覚で滞在を引き延ばす |
進捗ログ
- 理事会で「情報栄養成分表示」の構想が立ち上がる。情報の摂り方を“食事”になぞらえるところから始めた
- 脳内物質で分類すると比喩が成り立たないことに気づき、「コンテンツ側に配合される成分」として認知添加物を定義し直す
- 分類を再検討し、60を超える候補から成分名を選定。研究者を迎えて分類の枠組みを見直す
- 芸術工学会に発表を申請。掲載成分を「あるある」と納得できるものに厳選し、電子書籍の初稿をつくる
- 掲載17成分が確定。挿絵17点が揃う
- 学会発表、プレスリリース、電子書籍の公開 (予定)
